この資料では、筆者がアメリカ大陸を自転車で旅行中、 野宿したときに良く作っていた料理を紹介する。
ここで "野宿" とはキャンプの一種であるが、キャンプ場を使用せず、 郊外のハイウェイ沿いの空き地や林の中で人に見つからないよう コッソリとやるキャンプのことである。
自転車旅行で野宿という特殊な条件下で作る料理には 以下のことが要求される。
色々と試してみた結果、これらの要件を満たすものとして 最終的に落ち着いたのがパスタと炊き込みご飯である。
一応断わっておくと、 筆者は一人暮らし歴13年であるが炊事したことは殆どなく、 料理のド素人である。そして、食べ物の好き嫌いがなく、 何でも美味しく食べられる味覚を持っている。 そのため、食べ物にこだわりのある人にとって、 ここで紹介する料理は とても食べられる物では無い、かも知れない。
そもそも自転車旅行で自炊する必要はあるのか? 実際には、よほど人口の少ない地域へ行かない限り 数十km置きに人が住んでいる村が存在し店やレストランも存在するので、 計画的に移動すれば自炊しなくても済んでしまう。
しかし、それでも自炊する理由はある。
とはいえ、自炊が多くなればそれだけ現地の料理を食べる機会が減り、 現地の人と接触する機会も減ることになる。 せっかく異国の地を旅行しているのだから 出来るだけ現地の料理を食べるのが良いと思う。
パスタは最も簡単かつ短時間で作れる野宿料理である。
材料:
作り方:
ノウハウ:
白いご飯ではなく炊き込みご飯にする理由は、 おかずを別に作るのが面倒くさいからである。
材料:
作り方:
ノウハウ:
パスタに比べると調理時間が少し増えるが、代わりに以下の利点がある。
炊き込みご飯で水の量を増やせば自動的に雑炊になる。 わざわざ雑炊にする理由は、単に雑炊が好きだから。
作り方は、以下の点を除いて炊き込みご飯と同じ。
アルゼンチンには美味しいサラミが安く売っている。 サラミは冷蔵しなくても日持ちするので、自転車での持ち運びには都合が良い。 筆者はパタゴニアのハイウェイ沿いで野宿するときはよくサラミを焼いて さつま芋の炊き込みご飯と一緒に食べていた。
作り方:
以上の料理は夕食で作っていたものである。 ここでは朝食に食べていたものをついでに紹介する。
卵は冷蔵しなくてもある程度は持つので、 割れないようにだけ注意すれば持ち運びは可能。
料理方法としては、"茹で卵" が調理時間はかかるけど簡単で 洗い物をしなくても良いので一番楽。鍋に卵と水を入れて火にかけて、 沸騰してから5〜10分くらい待つだけで良い。 茹でた後のお湯はそのままお茶、コーヒーに使える。
目玉焼や卵焼きやスクランブルは、フライパンが汚れるし油が必要だったり 調味料を入れたり丸めたりひっくり返したり炒めたりと 作業的に忙しくて面倒くさくて野宿向きではない。
パスタは大陸中どこにでも売っている。 パスタにはスパゲッティとマカロニがあるが、スパゲッティの方が 収納性が良く必要な水の量も少なくて済むので有利だと思う。
自分は Maggi というブランドの固形タイプのスープの素をよく使用した。 わりとどこにでも(日本でも)売っている。
パスタ用トマトソースは、缶詰かレトルトで売られていることが多い。 ただし、地域によって入手性が悪かったり、 北米では瓶入りで大容量で重いものしか売ってなかったりする。 自分は北米では豆缶やパスタ缶を代わりに良く使っていた。 醤油やマヨネーズでも行けるかも知れない。
パスタでも炊き込みご飯でも、いわしの缶詰が良く合うと思う。 無ければツナ缶で我慢する。 下の写真はトマトソース缶(左)、いわし缶(右上)、貝缶(右下)。
ソーセージはパスタに良く合う。 ホットドッグ用の6本入り密封タイプのものが アルゼンチンやペルーに良く売っていた。 低地の暑いところで冷蔵しなくても何日かは大丈夫だった。
ブラジルでは12本入りとか大容量のものしか見つけられなかった。 北米にも売ってるが、安いものは美味しくなかった。
米は大陸中どこにでも売っている。 パッケージ売りの商品は最小で 500g か 1kg から。
ブラジルでは普通のスーパーに売っているのを良く見かける。 それ以外の国では、大都市の中華街か韓国人街の食料品店で入手できる。
アルゼンチンには美味しいサラミが安く売っている。 下の写真は、チリやブラジルに売っている密封タイプのサラミだが、 アルゼンチンのものに比べると高くて味も今一つ。 非常用に1本くらい持っておくのは良いと思う。
ふた付きの片手鍋が最も使いやすい。大きさは 1.5L あると楽。 鍋はどこにでも売っているが、アルミ製の軽量のものは意外と入手性が悪い。 もちろんキャンプ用のクックセットならば収納性に関してはベスト。
下の写真の片手鍋はチリの生活雑貨店で買ったもの。
肉やサラミを焼くのに、鍋とは別にあった方が良い。 お茶を沸かすのにも使えるので、大きめのものが良い。 フライパンはどこにでも売っているが、 アルミ製の軽量のものは意外と入手性が悪い。
下の写真のフライパンはアルゼンチンのスーパーで買ったもの。
米を炊くならとろ火に出来るものが良い。 自分はこの手の旅では定番の MSR のガソリンストーブを使用した。 ガソリンストーブは先進国でなければ首都クラスの大都市にある 輸入キャンプ用品店でしか入手できないので注意。
それ以外に、消耗品として以下のものがあった方が良い。
自分はいつもテントの中に座った状態で、 出入口の外側にストーブと鍋を置いて炊事している。 炊事中は結構物が散乱するため、 その他の道具や食材は常にテントの中に入れておくことで紛失を防ぐ。 蚊が多い地域では、テントの出入口で蚊取線香を2〜3本同時にたいて 蚊の侵入を防ぐ。
炊事作業の全体的な流れは大体こんな感じ:
ガソリンストーブの場合、 一度火を消したあとは冷めるまで再点火するのは危険なので、 なるべく火を消さずに続けて作業した方が効率が良い。
料理は鍋から直接食べれば良いので、皿は不要。 その方が荷物が減るし洗い物も減る。
フォーク、スプーン、ナイフ、皮剥き器も同様に、 お茶の入ったコップにつっこんで濡らしてから トイレットペーパーで拭き取れば綺麗になる。 そのお茶が入っていたコップもトイレットペーパーで拭きとるだけで良い。
この方法は、スポンジ束子を使って洗うのに比べると水の節約になり、 手間もかからないという点で野宿では絶対的に有利である。 スポンジ束子は再利用するためにそれ自体も洗って乾かす必要があるため、 水の無駄使いになり手間もかかる。
1回の野宿で消費する水の量は自分の場合 3L くらい。 しかし翌日の走行分や非常時のことも考慮して 5L くらい持っておきたい。 もちろん暑い地域では沢山の水を消費する。
水は重いので、できるだけ野宿体制に入る直前に入手したい。 容器は 1〜2L くらいのペットボトルを使うのが便利。 店や民家で飲料水が手に入ればベストだが、川や湖の水でも良い。 少しくらい濁っていても沸かせば大丈夫だ。
それなら最初から川や湖のある場所で野宿できれば良いのだけど、 水のある場所には必ずと言ってよいほど人が住んでいるため、 カナダ北部など本当に人口の少ない地域を除いてはなかなか難しい。